特定不能の何か

医学と社会保障、国家、人生、感じたこと.

『職場のLGBT読本』

 LGBT 関連の本を読みました.

 

職場のLGBT読本:「ありのままの自分」で働ける環境を目指して

職場のLGBT読本:「ありのままの自分」で働ける環境を目指して

  • 作者: 柳沢正和,村木真紀,後藤純一
  • 出版社/メーカー: 実務教育出版
  • 発売日: 2015/07/22
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
  • この商品を含むブログを見る
 

 

 もう少しアカデミックな本を読む胆力が欲しいところですが,こういった実務的あるいは実体験に基づいた系の本が読みやすくてどうもいけませんね.

 

 タイトルの通り,職場における LGBT 対応とでもいいましょうか,そういう内容が主です.どちらかというと職場人事の人だったり,経営者に向けているように思います.ただ,当然それを被雇用者の側から見ても学びはあると思いますから,そういうつもりで買ってみました.

 いくつか気になった点など.

 

LGBT は生まれつきかどうか

 多くの科学的な評価によって,おおむね生まれつき(先天的)だけれど,生まれてから(後天的)の影響も少なからずあるというのが主流のようです.

 このへんは,これ以上突き詰めていく手段があまりなさそうに思います.

トランスジェンダーはかなり困っている

 虹色ダイバーシティという団体(参照:特定非営利活動法人虹色ダイバーシティ | LGBTがいきいきと働ける職場づくりをサポートします)が比較的大規模な職場調査を行って得たデータが紹介されていました.年齢,雇用形態,年収,学歴を始め,就業に関するいろいろなアンケート調査でした.

 特に,学歴において,非当事者(非 LGBT )において大卒+院卒が84%なのに対して,MTFでは58%,FTMでは46%と,明らかに率が下がっているのが気になります.年収や雇用形態なども,LGBT 群では低くなっているのですが,年齢による調整がないのでなんとも言えません.しかし,学歴においてトランスジェンダーが明らかに低いのは,思春期の時点で様々な困難にぶつかり,進学に至らないのではないかと推察できそうです.

 やはり,LGBT 思春期に対する取り組みは必要な気がしています.また,特にトランスジェンダーに対してはサポートが必要でしょうね.

職場のあり方,国家のあり方

 外資系企業や,国内でも野村証券とかソニーとかの,社内での LGBT への取り組みも紹介されていました.私の大学時代の先輩に,ソニーを退職して再受験されていた方がおられましたが,ソニーって社風は相当自由らしいです(最近の製品づくりはあんま自由じゃなさそうですがw).

 特にトップ企業とされているところでは,多様性が生産性につながる面は多分にあるだろうし,むしろマイノリティに隠れた才能を掘り起こす余力みたいなものは,トップ企業にしかないのだろうと思われます.

 そういった面からいうと,マイノリティが自分に適した職場を探すには,まずはマイノリティ自信が「選べる立場に」なる必要はどうしてもあろうかと思います.もちろん,ゆくゆくは社会の隅々にまで理解が進むといいと思うのですが,それには相当な時間がかかりますので・・・

 多様な人々を受け入れる国ができればいいなと思いますが,国全体がそうなることを望むのは,非現実的かなと思います.自由の国アメリカにだって,排他的な人はいますし,それをゼロにすることは不可能なように思えます.

 まずは個人のエンパワメントをどんどん進めていくのが,現実的かつ効果的なやり方なのかなと.そういった意味で, NGO の活動はとても重要だなと思います.

 

 本の内容とはかけ離れたメモになってしまいましたが,少し考えるきっかけになり,よかったです.