特定不能の何か

医学と社会保障、国家、人生、感じたこと.

私に影響を与えた本

 人と話をしていて,どういうことに興味があるのかというような質問を受けた.どういうこと,といっても,マラソンとか料理とかセックスとかそういう嗜好の話ではなく,思想的なところについて聞かれたような気がするので,本棚を眺めながら,自分自身へのまとめとしても書いておく.

 

正義論周辺

 ツイッターで非常によくしてもらってる人から,社会保障を考える上で,政治哲学を勉強すると良い,と教わっていくつか読んだけど,現時点での私の考え方に最も影響を与えたのは,ロールズとキムリッカの考え方です.

正義論

正義論

 
新版 現代政治理論

新版 現代政治理論

 

 正義論の本体と政治哲学の総論・概観としては上の2冊が自分にとっては最も重要でした.もともと社会規範を考えることが好きだったけど,その強い裏付けになったのがこれらの本でした.前職での現場の体験でも,病気と人の人生と不合理についてしみじみ考えることが多く,そういったもやもやに対する道筋を与えてくれるものでした.

 キムリッカの本で,マイノリティに特に焦点を当てている本があって,それは私自身がセクマイとして自覚があった時期に重なって知ったところもあって,思い入れのある本です.

多文化時代の市民権―マイノリティの権利と自由主義

多文化時代の市民権―マイノリティの権利と自由主義

 

  万が一,正義論に興味が出た人も,上記から始めず以下の解説本から入ったほうがベターです.

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)

 
ロールズ (「現代思想の冒険者たち」Select)

ロールズ (「現代思想の冒険者たち」Select)

 

 

臨床関連

 前職関連で,臨床家としての洞察を感じられたのは,以下の本がありました.

水俣病 (岩波新書 青版 B-113)

水俣病 (岩波新書 青版 B-113)

 
〈正常〉を救え 精神医学を混乱させるDSM-5への警告

〈正常〉を救え 精神医学を混乱させるDSM-5への警告

 
子どものための精神医学

子どものための精神医学

 

 水俣病から得られる示唆は,福島の原発事故にも通底するものがあると思います.

 発達障害周辺から,精神医学にもかなり興味を持ちました.身体疾患は見れば重さがわかるけれど,精神の「非定型性」は白か黒かというわかりやすいものがなく,正常から異常が連続的(専門的にはスペクトラムと表現する)で,境界に位置する人たちの大変な苦労が社会的にも認知されてきつつあるところですが,医学的に見た正常・異常の危うさについて警鐘を鳴らすアレン・フランセスの本は重要でした.

 子どもの精神医学や発達,障害児周辺は,ライフワークとしてやっていきたいと思っています.

 

その他 

自分の小さな「箱」から脱出する方法

自分の小さな「箱」から脱出する方法

  • 作者: アービンジャーインスティチュート,金森重樹,冨永星
  • 出版社/メーカー: 大和書房
  • 発売日: 2006/10/19
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
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 啓発本はほぼ読まないんですが,これだけは印象に残っています.

 メッセージは単純で,相手を変えることは無理で,変えられるのは自分しかない,ということだと思っています.

 

 

 改めて挙げてみると,あまり多くはありませんでした.

 思えばここ10年くらいに関しては,現場での経験で得られた洞察の多くは上にあげた正義論周辺のロジックで裏付けされてきたように感じます.

 最近は人権問題に興味があって,それもちょっと変な話ですが,障害児・者の人権を考える際に,アニマルライツを少し勉強してみるとつながりがあるような気がしていて(捉え方によっては不謹慎に思われるかもしれませんが,真面目です),人権の周辺にアンテナを伸ばしたいなと思っています.