特定不能の何か

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これが核酸医薬か

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 最近医学をちゃんとやっていないので,患者家族より知るのが遅くなったという.ヌシネルセン(商品名スピンラザ)は,乳児型(主にはI型) SMA(脊髄筋萎縮症) の疾患修飾薬.この病気に対する薬としては世界初のもの.

 脊髄筋萎縮症は,発症時期により4つのタイプに分けられる.新生児〜乳児期発症がI型で,最重症.IV型は成人発症で,一応寿命としては平均通りらしい.脊髄筋萎縮症は,運動神経(筋肉に指令を出して,体を動かす)のおおもとである,脊髄に存在する前角細胞の変性により,筋肉を動かすことができなくなる病気.乳児型は予後が悪く,ほとんど体を動かすことができず,呼吸もできなくなって人工呼吸器をつけることになる.脳自体は正常なので,周囲を認識することはできると言われる.遺伝子異常が知られており,異常な mRNA が生成されることにより必要なタンパクが作られなくなって発症する.
 そんな SMA は,基本的に発症したら最後,根本的に治療することはできず,病状の進行に応じて呼吸器などをつけるしか生存の方法がなかった.
 ヌシネルセンはこれに対する初めての薬で,根本的な治療ではないが,必要なタンパクが作られるよう, RNA レベルで作用するという.

 ヌシネルセン発売元に,臨床試験の結果が出ている.

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出典:Spinraza.jp|乳児型(主にⅠ型)への有効性

 これを見ると,治療群の効果もさることながら,対照群の救われなさがすさまじい.このように,治療しない(自然経過)は,運動マイルストーンを一切獲得していかないことなのである.そういう恐ろしい疾患であるが,このほど初めてそれに有効性のある薬が開発・認可された.

 希少疾患ではあるので,滅多に使うことはないだろうけど,画期的.

 薬価は1バイアル 930万円ほどとのこと.まあ,妥当な線なのだろう.

 朝,この薬について懐疑的と書いたが,薬自体の効果というより,本疾患のあまりにも過酷な自然経過を改めて知って,親にとっては大きな救いだろうなと思った.